2009年3月19日木曜日

提出した意見書

担当者様

貴社の「先生:生徒指導は今」を関心を持って拝見しております。
2006-2008の「育ち直しの歌」も ネットで読ませて頂いておりました。

東京都立川市立第一中の嶋崎政男校長の「荒れについて」の分析が ありました。「昔からある親の放任に加え、溺愛(できあい)による耐性の欠如や、親の過度な干渉への反抗が特徴だ」

アドラー心理学では 次のように分析しています。
・ 甘やかし・過保護・過干渉・放任・貧困・否定・虐待・きょうだい間競争
・ 軽視・持っている障害
http://ourworld.compuserve.com/homepages/hstein/c-map1.htm

私は 現在 モントリオールで 心理セラピストをしております。
Canadian Counseling Association の Certified Counselorです。 
http://www.ccacc.ca/QC-Montreal.html
http://www.mmcfca.blogspot.com

日本で 10年間 公立小学校の教師を経験した後、ペアレンティングのインストラクター・心理カウンセラー(日本の民間団体の認定)になりました。インストラクター・カウンセラーとして働くうちに 精神病理についての知識の必要を感じAdler School of Professional Psychology http://www.adler.eduで修士を卒業しました。

私たち人間の 基本的な思考、行動傾向は 心理学の観点から10才位までに出来上がります。
日本の社会体制は 第二次世界大戦の敗戦をきっかけに君主国家から民主国家に大きく変わりました。家庭・学校・会社・社会にあった縦型社会の秩序は 年を経るにつれ 崩れて行きました。
家庭と社会で影の薄くなった縦型の関係(上意下達)は 学校と会社では残っており その誤差と混乱の中で子ども達が育って来ました。
民主主義社会の中での秩序・責任の取り方・自立心の育成方法を知らない大人が次の世代を育ててきたのです。

フロイト・ユングと同じ世代の精神科医 アルフレッド・アドラーは 「目の前に問題を抱えている子どもが居たら 子どもを変えようとするのではなく、親や教師が対応を学ぶべきだ。」と説き 親や教師への教育に力を注ぎました。
http://ourworld.compuserve.com/homepages/HStein/guid.htm

子どもの非行や荒れには 目的があります。
上のサイトの中にThe four goals of misbehaviorと説明されています。
1. 注目・関心をひく
2. 力を示す
3. 復讐
4. 無気力

民主主義の社会の秩序作りが 日本の学校で家庭で求められています。アドラー心理学に基づく「勇気づけの子育て」は 欧米では100年の歴史があります。私たち大人が この対応方法を家庭、学校で実践すれば 学校や社会が直面している問題の解決の糸口になります。

私が日本でペアレンティングのインストラクターをしていた時に 不登校のお子さんの4人の保護者の方が講座を受けられました。講座の内容を実践された結果 4人のお子さんは数ヶ月後には 全員学校へ行くようになられました。
あるいは保護者に「勇気づけの対応」を期待出来ない場合は 教師が代わって勇気づけを行うことができます。

私は 小学校の教師を退職した後も 自分で経営する私塾や家庭教師をして子ども達と関わって来ました。アドラー心理学のペアレンティングを学んでからは 「勇気づけ」を学習指導に取り入れた為 成績の効果も子どもの意欲も増しました。学習を「自分の課題」として取り組むようになります。

日本では残念なことに 縦型社会の遺物である「勇気くじき」が家庭・学校・社会で多く見られます。
勇気をくじかれた子どもも大人も 建設的な行動が取れません。結果を予測し、自分の行動をコントロールする力が欠如しています。生まれてきた子どもは 誰もが自分で這い、立ち上がり、歩こうとします。つまり出来ないことに挑戦する勇気を持っています。その勇気を挫くことなく、成長を援助していく為には 私たち大人が対応方法を学ぶ必要があります。

私自身、15年前 アドラーのペアレンティングに出会った時は 大きなカルチャーショックを受けました。例えば 当時の私は「姑が強いから 言いなりになってきた。」と 不満を持ち、気の強い姑に責任があるかのような思いがしていたのですが「気がついていなかったけれど 言いなりになることを選択したのは 自分だった。」という 責任の取り方について全く知らなかった事です。

また 日本の小学校・中学校で多くの「勇気くじき」を体験してきた二男に 常に「勇気づけ」で対応してきました。私が留学する時に 本人の選択で 一緒に北米に来ました。こちらで高校を卒業して 現在はアメリカの芸大で ジャズベースを学んでいます。日本の教育体質に合わなかった本人は「日本にいたら 中卒でプータローをしていた。」と言っておりますし、私もそう思っています。


不登校、ニート、引きこもり、うつ病を始めとする精神病理の予防として大きな働きをする「勇気付けの学校経営・勇気づけの学級経営・勇気づけの学習指導」「勇気付けの育児」が日本社会に求められていると 自分自身の教師としての体験、自分の子ども達が経験した学校、そして心理セラピストとして日本の様々な問題を見て切実に思います。

精神病理の予防として効果の大きい「勇気づけの対応」が日本の学校、あらゆる世代の子どもを持っている人々、日本の社会に求められていると思います。

お時間を取って読んで頂き ありがとうございました。